頭の良さは遺伝によって決まるという説を耳にしたことはないでしょうか?
知識の暗記量や論理的思考力を日々求められる受験生にとって、この言説が本当かどうかは気になるところであり、もし本当に頭の良さが遺伝で決まるのなら努力をしても無駄ではないかと悲観してしまいます。
しかし、嬉しいことに頭の良さを決めるのは遺伝要因だけではありません。
この記事では遺伝以外に頭の良さを裏付ける「環境要因」や効率的に記憶するための「暗記術」についてお伝えします。
頭の良さと遺伝の関係性
通説として、頭の良さが遺伝に与える影響は約50%だと言われており、その他には子供時代の過ごし方など後天的な生活環境が個々人の知能に影響を与えます。
潜在的に持っている遺伝的要素が実際に表に現れるかどうかはその人が置かれた環境によっても違いがあり、遺伝的要素が表面化する可能性を上げるのは総合的な体験数や多様な環境に触れた数の多さです。
ただし「知能は遺伝とは関係ない」とする説もあり、また遺伝の影響を受けている特徴は骨格や運動神経など頭の良さに限定されるわけではないことを考えると、頭の良さと遺伝の関係性のみを特別視して悲観する必要はありません。
知能と環境
頭の良さを決めるのは遺伝以外にも環境要因があり、特に子供時代には周囲の環境の影響をダイレクトに受けやすいと言えます。
子供にとって適切な環境を整え「自然の中で五感を使う体験」や「知的な活動を通して探求心や好奇心を刺激する体験」を提供することは、中長期的に見て子供の将来にプラスの作用がある投資です。
また幼少期の子供は両親の嗜好を真似しやすい傾向にあるため、親が知的活動を日常的に行う姿を子供に示していると、子供の能力が適切に開花する可能性は上がりやすくなります。
後天的な生活環境|①子供時代の原体験
五感をフル活用して、頭の良さの基盤となる部分や社会を強く生き抜いていくための人間としての底力を培う【原体験】を幼少期に数多く体験しておくと、成長後の価値観形成や創造力向上に寄与すると言われています。
具体的には、使える能力の引き出しの数を増やして、実際の生活で求められた時に適切な力を選んで使うイメージです。
原体験の種類には、
「自然の中へ赴く体験を通して『火』『水』『石』『土』『草』『木』について学ぶ体験」
「動物の飼育体験を通して有限の命や別れについて知る体験」
「大自然の力を感じるような体験を通して人間の力の限界を知る体験」
などがあります。
原体験と言われる体験はどれもその時その場で頭の良さに直結するスピーディーなものではありませんが、地道な積み重ねの先にしっかりとした建造物が出来上がる基礎工事と同様です。
後天的な生活環境|➁知的好奇心をくすぐる体験
先に述べた原体験と同じく頭の良さを後天的に決める生活環境として、知的好奇心を刺激する体験があります。
子供自身が好んで興味を示す物から徐々に色々な物へと知識を発展させていくことによって、探求心や好奇心を育むことが可能です。
子供の知的好奇心を刺激する具体例として
「両親が意欲的に何かを学習する姿勢」
「興味を抱いた対象についてその場で調べられる仕組み作り」
が有効だと言われています。
他に
「読書で他者を思いやる気持ちや読解力を学ぶ」
「ニュースで時勢を学ぶ」
「図鑑で生き物の生態を調べる」
なども知的好奇心を高めるのに有効です。
継続する努力や何かを調べることを厭わない力は自己肯定感を高め、その力を活かして他者の役に立つことでさらに自己有用感も高まる好循環が生まれます。
効率的な暗記術
ここまで「頭の良さと遺伝の関係性」および「頭の良さと後天的な生活環境の関連性」について説明してきましたが、もし自分はどちらもそんなに良い影響を見込めないと思ったとしても悲観する必要性はありません。
たしかに遺伝は頭の良さに影響を及ぼす側面がありますが、高度な学習をする際に使われる脳の領域の発達は思春期から20代半ばと言われているため、受験生の年齢時点では【これからの環境や努力で補うこと】がまだ充分に可能です。
これからお伝えする暗記術を使って、努力の占める割合をぜひ効率的に増やしてください。
【物語として覚える】エピソード記憶と場所法
大量の暗記をする際には反復練習の回数がより習熟度に反映されるため、朝に目を通したテキストを再度夜に復習するなど忘れないようにする工夫が重要です。
運動などの実際に身体を動かして覚える手続き記憶と比べて暗記は比較的忘れやすい記憶に区分されますが、暗記を習慣化して内容を長期記憶にまで落とし込むと、次第に苦労なく思い出せるようになります。
また単に暗記をするのではなく、
「覚えたい物事に規則性やストーリー性を持たせる暗記法」
「覚えたい物事を特定の場所に紐づけて覚える暗記法」
を用いると記憶が定着しやすいです。
具体的には1つ目の暗記法をエピソード記憶、2つ目の暗記法を場所法と言い、前者は対象にストーリー性を持たせて感情を動かすことで記憶の持続性を上げる方法、後者は既知の場所と組み合わせて新規の情報を記憶に定着させる方法だとされています。
映画の内容をなかなか忘れないのと同じで、突拍子のない話や自分の好きな物を組み込んだストーリーに仕上げると、脳に強烈な印象が残ってさらに効果的です。
【身体で覚える】手続き記憶
記憶は短期記憶と長期記憶の2つに分類され、長期記憶をするとその名の通り長期的に記憶を保持することができます。
長期記憶に落とし込むための反復練習は効果がある反面多くの時間を要するため、比較的余裕のある早い時期や学年から始めてコツコツと継続するのが有効です。
自転車の乗り方など一度習得すればなかなか忘れることがないような身体を使って覚える体験を手続き記憶と言い、学習もこれと同様に「音読」「メロディーに乗せる」「手を動かして何度も書く」などを試すと忘れにくくなります。
遺伝で頭の良さが決まると諦めてしまわずに、効率的な暗記術を試すなど自分に合った勉強スタイルを粘り強く探っていきましょう。
頭の良さと遺伝の関係性|まとめ
今回は「遺伝と頭の良さの関係性」および「生活環境が頭の良さに及ぼす影響」についてお伝えしました。
多くの環境や出来事に触れることで遺伝的素養は実際に出現しやすくなる点を考慮すると、あらゆる選択肢を増やすことに繋がる受験勉強はそのような体験の1つとして、この先どんな進路を選ぶにしても無駄にはなりません。
頭の良さの遺伝的な個人差を完全に無視することは難しいですが、知性や最終的な能力を決めるのは学習意欲や学習量です。
遺伝の影響は年齢を重ねるごとに大きくなると言われているため、社会に出て数十年後に「遺伝と努力のどちらが上回ったのか」の答え合わせをすることになります。